少し前まで、「競売不動産」と聞くと、一般の不動産と比べて、違和感をお持ちの方も少なくないかと思います。
しかし、最近では、関係法の整備や手続きがオープンとなり、競売物件の不動産取引情報の公開化も進む中、一般の方からの照会・関心が高まっています。

当社は、競売不動産取扱主任者を配置し、これまで多くの競売物件のサポートをしております。
特に、競売不動産に農地が含まれている物件では、入札に参加するためには、買受適格証明書(許可申請の手続は、物件が所在する市町村の農業委員会)が必須となるため、農地転用許可を専門としている当社にお問合せ・ご依頼を頂く方が多くおられます。

1 競売不動産市場の状況

競売不動産は、住宅を購入するときには購入物件を担保にして住宅ローンを借りるケースが多く、金融機関等の債権者は抵当権を設定します。
当その返済が不能となれば、債権者は裁判所に申立て、債務者の財産を差し押さえ、その財産を強制的に売却させ、売却代金から債権を回収するになります。
この強制的な売却の手続きを「競売」といいます。「競売不動産」とは、この競売において、売却対象となる財産が不動産の場合に「競売不動産」といいます。

競売不動産の市場は、コロナ禍が終息しない現状では、一般不動産市場も先行が不透明な状況ですが、これまでは、一般不動産市場の1割程度が競売不動産市場となっておりました。
最近では、概ね前年並みで推移しています。

不動産競売が実施される前に、債権者との合意による一般市場で売却「任意売却」が定着しつつあり、競売より高値で売却できるケースが多く、債権者と債務者の双方にメリットがあることから、任意売却の合意ができる状況であれば、売却の手段としては、任意売却が望ましいといえます。

抵当権の実行を行う金融機関等においても、債務者に対象物件が競売となる前に市場で売却することを勧めます。
それは、競売による売却には時間がかかり、売却金額は低額になることが予測されるからです。
それでも競売となるのは、任意売却の合意に至らない状況、例えば、債務者と債権者との「売却価格の調整」が困難、「占有者」の問題、「債務者との連絡不能」などの解決できない場合において、競売の手続きに入ることになります。

コロナ状況で幅広い分野での需要急減の影響は、不動産市場においても顕在化しはじめており、一般不動産市場も競売不動産市場も見通せない状況にあります。

2 一般流通不動産と競売不動産との相違

競売不動産は、民事執行法に基づいて裁判所が行う競売物件に参加することによってのみ入手が可能な物件です。
不動産業者を通じて、流通不動産を購入する場合は、宅地建物取引業法等により、業者自体が免許制とされており、また、契約上の重要事項説明義務や契約不適合責任の強化などにより、購入者の保護が図られています。

これに対して、競売不動産においては、裁判所は、法令に則って、手続を主宰するだけで、物件に関して一切責任を負わず、買受人(競売で落札者)を保護する制度はありません。

このため、競売には、原則、誰でも競売手続に参加は可能ですが、専門的な知識と経験が必要なことから、一般の方が入札に参加する場合には、「競売不動産取扱主任者」を配置する不動産会社を利用することが多い状況です。

3 競売不動産の流れ

都市部や特殊事情等を除けば、一般流通不動産の売買相場より、物件が安く購入できる場合が多いのが、競売不動産です。
売却手続で多い「期間入札」は、裁判所の公告後(BIT(不動産競売物件情報サイト)で公開)実施されます。

検討するにあたって、最初に、三点セット(物件明細書・現況調査報告書・不動産評価書)の確認が必要です。
なお、ネットからの三点セットは、固有名詞等が「黒塗り」されているため、管轄の裁判所で閲覧することが必要となります。

入札は、指定された期間内に保証金(売却基準価額の20%相当額)を振込、その証明書とともに入札書及び一定の添付書類を管轄裁判所に郵送、または、持参することで参加できます。
入札額は、公告に示されている「買受可能価額」(売買基準価額の80%)以上であればよく、他の入札者より1円でも高い者が落札することになります。

裁判所は、開札期日(東京では入札期限の8日後)に入札書を開封し、最も高い価額で入札した者が「最高価買受申出人」となりますが、この時点では確定とはなりません。
「最高価買受申出人」が適格かどうかを裁判所が審査し「売却許可決定」が出され、その後、一定の「執行抗告期間」(所有者・占有者からの異議受付期間)を経て、売却許可決定が確定されます。

その後、「代金納付期限の通知」がなされ、買受人が代金を納付して、所有権が移転する流れです。登記申請は、裁判所が嘱託で実施します。

4 競売不動産のリスク

裁判所から公告時に提供される「三点セット」は、物件の内容や条件を把握する貴重な情報であるものの、それだけでは分からないことも多く、競売不動産は、一般の消費者がいきなり入札に参加するのは大きなリスクを伴います。

また、三点セットの一つである「物件明細書」の記載は「執行裁判所の認識」を示したものであり、必ずしも正しいとは限らない、また、「現況調査報告書」においても、「現況調査報告書」における関係人の陳述内容も真実である保証はないため、正確に把握されてない場合もあります。
物件明細書等には「公信力がない」とされており、また、競売の申立てから競売の実施まで1年程度かかることから、調査時点からの時間経過で状況も変わっていることもあります。

以上のことから、入札を検討する競売物件は、必ず、自らの現地調査が必須であり、「競売不動産取扱主任者」を配置する不動産会社等に改めて調査を依頼し、正確な情報を収集して検討することが必要となります。

5 競売不動産のメリット

競売不動産のメリットは、以下のとおりです。
      
  1. 競売物件の売却基準価額は、一般不動産市場の価額の40~60%
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  3. 今特別売却物件(競売で落札されなかった物件)は、売却基準価額の20%安の買受可能価額で購入可能
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  5. 仲介及び諸費用の手数料は不要(登録免許税は買受人が負担)
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  7. 裁判所が職権により抵当権抹消手続
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  9. 建物であっても消費税は課せられない。

6 競売不動産のサポート

競売不動産の入札参加は、経験と知識がなくても可能ですが、上記のリスクから大きな損失を被ることもありますので、専門の「競売不動産取扱主任者」を配置する不動産会社にサポートを依頼することをお勧めします。

当社は、一般社団法人不動産流通協会の正会員ですので、安心して「競売不動産」を取得できるご支援をさせて頂きます。

また、当社は、社内に宅地建物取引士・行政書士を配置し、加えて、土地家屋調査士・司法書士・不動産鑑定士・税理士・建築工事事業者等との連携体制「ナビ・シグナル不動産の連携ネットワーク:不動産相談センター」を構築しております。
相続不動産の売却にあたっては、様々な諸課題をクリアする必要がありますので、当社の「不動産相談センター」をご活用ください。

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